渦電流形センサを用いた焼結歯車の良否判定の検討

研究の目的

焼結歯車は粉末金属を焼結することで製造されるために,複雑な形状に成形が可能であり,材料の無駄がなく安価に大量生産できる利点があります。また焼結歯車に転造加工を施すことで歯の表面が緻密化して,荷重負荷能力の改善ができます。そのために,転造加工を施した焼結歯車は自動車トランスミッション用歯車として期待されており,転造歯車の良否をインラインで判定するためのセンサが要求されています。

転造加工によって,気孔率,残留応力,抵抗率および透磁率が変化します。これらの物理量を測定することで,転造歯車の良否判定ができる可能性があります。一般に,気孔率測定には,切断した歯車を光学的に測定する破壊検査方法が用いられます。また,残留応力を測定するためには,渦電流形センサやX線回折,超音波などを用いた非破壊検査が用いられます。しかしX線回折を用いた残留応力の測定では,X線の浸透する深さが浅いために,歯の表面から内部までの測定が行えない問題が生じます。また超音波が気孔で反射されるために応力を検出できません。そこで,私達は渦電流形センサを用いた測定法を提案しています。本センサは,渦電流非破壊検査であるために,非破壊かつ短時間で測定が可能です。また励振周波数を変化,すなわち磁束の浸透深さを変えて,表面から内部までの測定ができるなどの利点があります。

 

そこで私達の研究室では,焼結歯車の良否判定ができる渦電流形センサの開発に関する研究に力を注いでいます。現在では,正確な良否判定を目的とした気孔率や残留応力の異なる焼結歯車の抵抗率および比透磁率の分布に関する検討や渦電流センサの小型化に関する検討を行っています。

 

焼結歯車および転造加工とは?

焼結歯車とは,金属の粉末を所要の形に圧縮し,圧粉体を作りそれを高温で焼き固めた合金です。しかし,通常の焼結歯車には焼結鋼全体に10 %程度の気孔が残存しているために,熱処理を施すことだけではトランスミッション用歯車としては強度が不十分であります。

 

そこで,焼結鋼に転造加工を施すことで表面強度を向上させる方法があります。転造加工とは,焼結鋼の中心部分に穴を開けシャフトを通し,両側からローラーを焼結鋼の半径方向に押し込むことで行われます。これにより,歯面接触時に最大せん断応力の生じる焼結鋼表面の残存気孔を減少させ,強度を向上できます。しかし,残存する気孔が多いと焼結鋼の強度が低下してしまいます。そのために,焼結鋼にどの程度気孔が残存しているのかを把握することが重要となります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図 1カラー マグネティックスリニアドライブ合同研究会.jpg

(a) 測定ブロック

図 カラー マグネティックスリニアドライブ合同研究会.jpg

(b) 測定原理

3 渦電流センサ

 
 


焼結歯車の良否判定を目的とした渦電流形センサとして,励振コイルとホール素子で構成される電磁センサを提案しています。

転造歯車の応力に抵抗率と比透磁率は依存します。この変化を出力電圧に変換し,残留応力や気孔率を推測して良否判定を行います。

 
渦電流形センサとは?

 

 

 

 

渦電流形センサの特長

(1) 非破壊・非接触

(2) 表面から内部(およそ2 mm)までの測定ができる

(3) 構造が比較的簡単

 

現在までの研究成果

未転造歯車,適切な転造歯車,過度な転造によって

剥離が生じた過転造歯車の3種類のサンプルの出力電

圧を測定しました。

さらに,転造加工に依存する出力電圧特性を明確に

するために,転造歯車と未転造歯車の相違に着目して,

出力電圧の変化量を下式で定義しています。

その結果,出力電圧の変化量は転造加工に依存して

り,転造加工の良否判定ができることを明らかにしました。

 

5 出力電圧の変化量-周波数特性

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


研究業績

(1)水野 勉,出口 見多,清水 悠介,志村 祐介,北村 善紀,竹増 光家,新仏 利仲,天野 秀一,吉川 紘,松本 重治:渦電流形センサを用いた焼結鋼の気孔率測定,粉体粉末治金協会講演概要集平成21年度秋季大会,p. 69(2009)

(2)北村 善紀, 出口 見多, 水野 渦電流形センサを用いた焼結歯車の空孔率測定電気学会産業応用部門大会講演論文集 p. 59 (2010)

(3)水野 勉,安里 優一,出口 見多,北村 善紀,後藤 聖,竹増 光家,新仏 利仲,天野 秀一,吉川 紘:渦電流センサを用いた焼結歯車の空孔率局所測定電磁力関連のダイナミックスシンポジウム講演論文集,pp.557-560(2011)

(4)水野 勉,安里 優一,北村 善紀,後藤 聖,渡辺 隆志,新仏 利仲,天野 秀一,吉川 紘,須田 敦:転造加工を施した焼結鋼の表面からの深さに依存する抵抗率と比透磁率, 粉体粉末冶金協会講演概要集p. 67(2011)

(5)水野 勉,安里 優一,北村 善紀,後藤 聖,渡辺 隆志,新仏 利仲,天野 秀一,吉川 紘:焼結歯車の転造加工に依存する渦電流形センサの出力電圧, マグネティックス・リニアドライブ合同研究会,p. 49(2012)

(6) 水野 勉,安里 優一,北村 善紀,後藤 聖,渡辺 隆志,竹増 光家,新仏 利仲,天野 秀一,吉川 紘,須田 敦:転造加工を施した焼結鋼の抵抗率と比透磁率分布, 粉体粉末冶金協会会誌「粉体および粉体冶金」Vol. 59No. 7pp. 385 – 390 (2012).

(7) T. Mizuno, Y. Asato, Y. Kitamura, S. Goto, T. Watanabe, T. Takemasu, T. Shinbutsu, S. Amano, H. Yoshikawa, A. Suda : Dependence of Magnetic Characteristics of Form Rolling Sintered Steel on Residual Stress, PM2012 YOKOHAMA, 掲載予定 (2013)

(8) 水野 勉,安里 優一,後藤 聖,渡辺 隆志,新仏 利仲,天野 秀一,吉川 紘:渦電流形センサを用いた転造加工を施した焼結歯車の良否判定電気学会論文誌A(基礎・材料・共通部門誌) Vol. 133No. 5,掲載予定 (2013)

 

 

 

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