1. シリコンゴム製ねじりばねを用いた光スキャナ用振動アクチュエータ

1.1 研究目的

 

光スキャナとは,レーザ光などの光を走査させるデバイスのことを指し,図1に示したようなバーコードリーダやレーザビームプリンタなどのスキャナ分野に広く利用されている。光スキャナを搭載したハンディターミナルは,バー コードを読み取ることで情報を管理することができる。これらの機器は省電力化,小形化が求められており,かつ耐久性も要求されている。効率よく駆動させる ためにばね共振を利用し,かつステンレス製の2枚の板ばねを用いた振動アクチュエータの検討を行ったが,高い組み立て精度が要求さればねの構造の簡素化が必要であることがわかった。

 

そこで,成型が容易であり,ばね形状をある程度自由に決めることができるシリコンゴム製ねじりばねを用いた光スキャナ用振動アクチュエータの構造の検討を行っている。

 

1 バーコードリーダの基本構造

 

テキスト ボックス:   
図2 シリコンゴム製ばねを用いた          図3 回転角- y方向の静推力特性
振動アクチュエータ
 
図4 共振周波数f0 = 49.1 Hzにおける走査ライン
 


1.2 シリコンゴム製ばねを用いた光スキャナ用振動アクチュエータ

 



 

 

2はシリコンゴム製ねじりばねを用いた振動アクチュエータの斜視図である。振動アクチュエータの可動子はシリコンゴム製ねじりばね,永久磁石,フレーム,ミラーから構成されている。固定子はコイル,ヨークによって構成されており,永久磁石の対面に配置してある。

ねじりばねの材料には成型が容易であるシリコンゴムを用いた。ねじりばねはH形の形状の片もち構造となっており,組み立てが容易な構成となっている。フレーム部分もシリコンゴムとすることでねじりばねと一体とすることができ,部品点数の削減を行うことができる。駆動の際は,永久磁石の磁束が電流の流れているコイルに作用することでトルクが発生し可動子が振動を行う。

 

3に回転角- y方向の静推力特性を示した。ヨークを用いているので,q = 0°のときの吸引力が大きく,q = 13.5°のときの静推力が電流の正負で異なる。また,片持ち支持でありy方向の剛性が弱いために,駆動時に走査ラインが2重線となる現象が生じた。そのため,走査ラインが直線となるような支持方式を検討した。

 

 

 

1.3 両端持ち構造を有する振動アクチュエータ

 

    

5 両端持ち構造を有する振動アクチュエータ    図6 回転角- y方向の静推力特性

7 共振周波数f0 = 58.9 Hzにおける走査ライン

 

 

 

 

5に両端持ち構造を有する振動アクチュエータを示した。ねじりばねの両端を固定することによって,y方向の剛性を強くした。

 

6に回転角- y方向の静推力特性を示した。回転角q = 13.5°において,起磁力NI = 21.2 ANI = -21.2 Aのときのy方向に発生する静推力Fyはそれぞれ,Fy = - 25.4 mNFy = - 21.1 mNであった。両端持ち構造を有する振動アクチュエータFyの差は4.3 mNであり,シリコンゴム製ねじりばねを用いた振動アクチュエータ(4.7 mN)より小さくなった。また,共振周波数f0 = 58.9 Hzにおける走査ラインは図7となり,直線になった。しかし,z方向の寸法が大きくて,生産性が悪く,永久磁石の位置決め機構がなかったために,永久磁石が脱落してしまう。

 

 

 

 

 

 

1.4 金属フレームとシリコンゴムの一体構造を有する振動アクチュエータ

    

8 金属フレームとゴムベースの一体構造     図9 回転角- y方向の静推力特性

を有する振動アクチュエータ

 

10 共振周波数f0 = 50 Hzにおける走査ライン

 

8に金属フレームとシリコンゴムの一体構造を有する振動アクチュエータを示した。金属フレームとシリコンゴム(ねじりばねとゴムベースが一体となった部品)を一体とすることで,生産性を向上させた。さらにシリコンフレームを小さくしてz方向の寸法を小さくした。その結果,金属フレームとシリコンゴムの一体構造を有する振動アクチュエータのz方向の寸法は5.9 mmとなり,両端持ち構造(z方向の寸法:10 mm)と比較して,40 %低減された。また,永久磁石の位置決め機構を設けることで耐久性を向上させた。

 

9に回転角- y方向の静推力特性を示した。回転角q = 13.5°において,起磁力NI = 21.2 ANI = -21.2 Aのときのy方向に発生する静推力Fyはそれぞれ,Fy = - 11.5 mNFy = - 8.5 mNであった。金属フレームとシリコンゴムの一体構造を有する振動アクチュエータのFyの差は3 mNであり,シリコンゴム製ねじりばねを用いた振動アクチュエータ(4.7 mN)より小さくなった。また,共振周波数f0 = 50 Hzにおける走査ラインは図10となり,直線になった。

 

 

 

1.5 主な研究論文

1.     金城 秀幸,小柳津 一晃,井上 要,卜 頴剛,水野 勉:金属フレームとシリコンゴムの一体構造を有する振動アクチュエータの検討,マグネティクス/リニアドライブ合同研究会資料,MAG-13-31 LD-13-352013.

2.     Yinggang. Bu, Hideyuki Kinjo, Kazuaki Oyaizu, Kaname Inoue, Tsutomu MizunoCharacteristics of a Fix-end Torsion Spring Oscillatory Actuator with Molded Silicone RubberApplied Mechanics and Materials Vols, pp.416-417, 2013.

3.     卜 頴剛,金城 秀幸,小柳津 一晃,井上 要,水野 勉:シリコンゴム製ねじりばねを用いた両端持ち構造を有する振動アクチュエータの諸特性,リニアドライブ合同研究会,LD-12-81pp. 89-932012.

4.     水野 勉,堀尾 達也,小柳津 一晃,金城 秀幸,卜 頴剛,段 志輝:シリコンゴム製ねじりばねを用いた光スキャナ用振動アクチュエータの検討,モータドライブ・リニアドライブ合同研究会,MD-11-70, LD-11-94pp. 89-942011.

5.     T. MizunoT. HorioY. TeramaeK. OyaizuOscillatory Actuator for Optical Scanner Using Torsion Spring Made of Silicon RubberThe 8th International Symposium on Linear Drives for Industry ApplicationsPS-1.21pp. 96-97, 2011.

 

 

 

 


 

2. デュアル可動子を有する共振形高速振動アクチュエータ

2.1 研究背景

 

光スキャナ用振動アクチュエータを小形にするために,可動子にミラーと永久磁石が直接取り付けられている構造を研究していた。この振動アクチュエータは50 Hzでの低速走査には適していた。しかし,数kHzの高速振動になると,永久磁石とヨークに発生する減衰力が増加するために,大きい振幅での駆動は困難だった。そこで,磁気減衰を低減して,大きい振幅で高速走査できるデュアル可動子を有する振動アクチュエータを考案した。

 

 

 

 

2.2 目標


1 設計目標仕様

項目

記号

数値

単位

備考

外形寸法

l×w×h

15×15×5

mm

 

走査角

a

±30

°

振幅:±15

走査周波数

f

3以上

kHz

共振状態

消費電力

P

100

mW

Vmax = 5 V

I max = 20 mA

1に設計目標仕様を示した。走査角は±30°,走査周波数は3 kHz以上である。外形寸法は15×15×5 mmである。また,消費電力は100 mW以下とした。

 

 

 

2.3 基本構造

 

11 デュアル可動子を有する共振形高速振動アクチュエータの試作機

12 デュアル可動子を有する共振形高速振動アクチュエータの基本構造

11と図12にそれぞれ,デュアル可動子を有する共振形高速振動アクチュエータの試作機とデュアル可動子を有する共振形高速振動アクチュエータの基本構造を示した。本構造は平面構造に設計されており、デバイスの薄型化ができる。アクチュエータの可動部は可動子1と可動子2の二つ可動部を有するので,デュアル可動子と呼ぶ。可動子2は反射ミラーとなり,光走査の役割がある。可動子1は駆動部となり,永久磁石を左右対称に配置して,永久磁石の対向にある固定部にコイルとヨークが設けられている。中央にあるミラー可動部はねじりばねを介して固定部と連結している。ばねの材質はSUS301Hとする。

本アクチュエータの可動子12はそれぞれ異なる共振周波数f01f02を持つ。本論文ではf01<f02で設計している。本構造では,可動子1が電磁力で駆動し,この振動が機械ばねを介し可動子2に伝達される。駆動周波数を可動子2の周波数f02にすることで,磁気減衰が発生する可動子1が小振幅で駆動をし,磁気減衰が発生しない可動子2が大振幅で振動する。それによって磁気減衰が低減されて,小電力で大振幅な高速振動をすることができる。

 

 

 

 

 

 

2.4 回転角-周波数特性

 

13 回転角q1q2-周波数特性

 

14 回転角q1q2-周波数特性の拡大図

13と図14にそれぞれ,回転角q1q2-周波数特性と回転角q1q2-周波数特性の拡大図を示した。可動子1の共振周波数f = 450.7 Hzで駆動させたとき,可動子1と可動子2の回転角はともに21°であり同位相であった。

また,可動子2の共振周波数f = 4695 Hzで駆動させたとき,可動子1と可動子2の回転角はそれぞれ,4.20.2°であり可動子2の回転角は可動子121倍であった。したがって,可動子2の共振周波数f = 4695 Hzにおいて可動子1が小振幅で,可動子2が大振幅であることが確認された。

 


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